ユメミルクスリ 攻略完了

 結論からいえば、まずまずの良作。恐らく本腰を入れているあえかシナリオは、アクが強いが、その分他では中々見られない展開もあって面白かった。特に終盤で、追い詰められた主人公が『吹っ切れて』からは見物。最も人を選ぶであろう場面でもあるが、私がこの作品に求めていたものと重なっていて楽しめた。ちなみに、このシナリオの影のMVPはアントワネットだと思う。適度に悪役で、きっちりヤラレ役。
 だが、良作というには難点が多いことも確か。シナリオが短いがための描写不足は否めないし、終盤はともかく序盤から中盤にかけては今一つ牽引力に欠ける。弥津紀、ねこ子シナリオが、あえかシナリオに比べると波乱が少なくて無難であるのも頂けないところ。正直、あえかシナリオがなければ良作未満と評価していたかもしれない。
 あえかシナリオと、弥津紀、ねこ子シナリオとでは、随分趣に違いがあるが、それはテーマの段階から設計が異なっているためだと思われ。主題歌である『せかいにさよなら』の歌詞に当て嵌めれば、弥津紀、ねこ子シナリオは『夢見るせかいにさよならしようか』――即ち、現実への回帰(或いは更生)がテーマだったのに対し、あえかシナリオは『今いるせかいにさよならしようか』――即ち、いじめ(或いは学校)からの脱出がテーマだったといえる。テーマが別物なら雰囲気もまた別物になるのが道理な訳で。だからシナリオの趣にも差異が出たのではないかな、と思う。……と、あれこれ御託を並べてみたけれど、結局はライターの差というのが最も有力な線だったり。それをいっては元も子もな(ry