I/O 感想

 生まれこそ異なるが、紛れもなく『infinityシリーズ』の遺伝子を受け継いだ作品。近未来という舞台設定や、多視点で絡み合う物語、量子論を用いたギミックなど、『infinityシリーズ』を経験した人には馴染み深いキーワードがちらほら。
 散りばめるだけ散りばめた謎のほとんどに対して、解答を提示したのは見事。近未来の世界観も上手く構築できていて、完成度はかなりのもの。けれど反面、設定の解説や伏線の展開と回収に力を注ぎ切ってしまって、シナリオまで手が回っていないという印象も受けた。構成上、話が冗長気味になってしまっていたり、テキスト、情報量の膨大さの割には描写不足となっている箇所があちこちに見受けられたりと、物語としての面白さを引き出し切れていないのが残念。
 総合的に評価すれば、十分に良作。ただ、方法次第ではもっと上を目指せるだけの力を持ち合わせているように感じられたので、とても勿体ない作品でもある。