ニンギョウがニンギョウ

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

 まず、値段が割高、という意見には賛成。文章量から鑑みると、実質的には標準的な本と変わりないのだろうが、矢張りあの薄さで四桁は厳しい。
 内容は、正直、従来の西尾維新氏の作品ほどはのめり込めなかった。良くもまあこんな不可思議な世界を創生できるものだと、その想像力には感服したが、設定を重視し過ぎたためか、肝心要の登場人物たちにいつもの魅力を感じなかったので残念。
 主人公は輪郭が明瞭とせず、妹たちも生気を感じさせない、あまりにも機械的な印象を受けた。……彼らが『ニンギョウ』であると思えば、納得できる話でもあるが。否、それでも矢張り、設定によってキャラの魅力を殺してしまうのは頂けない。
 西尾氏は、作業的に作品を書く、というが今回はその執筆方法の悪い所がもろに反映されたのではないかと思う。とはいえ、これほど奇妙で観念的な世界を見たのは初めてだったので、とても興味深い作品ではあった。